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インタビュー

【後編】「自分を大事にする」を仕事にする

山口 ひとみ

NPO法人育自の魔法

代表理事

「自分を大事にする」ということの、本当の意味を伝え続ける

「本当の意味を分かっている人は少ないからそれを言い続けている感じかな。それが自分を承認する、自分自身を認めるというところにつながると思うから。」
お話を伺ったのはプロコーチの山口ひとみさん。「自分を大事にする」を仕事にする【前編】に続く後編です。

 

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決断と転機

2005年、CPCC(Certified Professional Co-active Coach 米国CTIの認定資格)を取得した年の夏、ひとみさんは会社を辞める決断をする。当時、お子さんは18歳で大学受験前だったというが、仕事を手放せた強さとはなんだったのだろうか。

「強さでも何でもなく、純粋に嫌だったんですね。その前から会社を辞めたいなと思っていたけれど、やはり安定的な収入は手放しきれなかった。でも安定的な収入を握っている限り、自分の心にずっと嘘をつくことになる。それが許せなくなったんですね。次に何をやるかは何も考えていませんでした。結構、いつも無謀なんです。」

ただひとつ、決めていたことがある。それはCTIジャパンが日本で初めて開催するコーアクティブ・リーダーシッププログラムに参加すること。パーソナルコーチングと研修、インタビューの仕事など小さい仕事をたくさん積み重ねながら、何とか生活を成り立たせる日々の中で「お金がないので、分割のさらに分割で支払いをお願いしました。仲間がアメリカのリーダーシッププログラムに参加し、とても変化したのをみて、すごいなぁと思っていたんですね。絶対行きたかった。でもお金はないし、そんなに長い日程で会社を休めないし、我慢していました。そんな中、日本で開催されることを知り、迷いなく申し込みました。そのプログラムのスタートは1月。真冬の季節で水道が凍ったり、「プロパンが切れちゃったから今日お風呂ありません」と言われたりと、なんてサバイバルなところだろうと思ったけれど、そのプログラムの会場となったところは、森と空と川があって、とても心地よかったですね。プログラム最後の日、参加したひとりが、人口の19%が変化したら世の中はガラッと変わるという話をしてくれた。それが私たちの仲間の人数で日本の人口を割ると、年間6000人だと。『年間で6000人ぐらいずつインパクトを与えていくと世の中変わるね』と、みんなで決意して別れました。」

ひとみさんは、そこででてきた「人と自然をつなぐ」という使命を形にし、自分自身とつながり、自然とつながって人とつながる、というワークショップをはじめた。

 

自然の中で得た、自分の感覚

「長崎にいたころ、美しい自然が豊富で海があって、本当に癒されました。でも東京に戻ってきたら、仕事は出張が多く、ホテルと研修会場の往復で息苦しくなってしまいました。そこで当時学んでいたカラーセラピーの仲間と山に登り始めて、そのあとはずっと1人で山に登っていました。

2006年に戸高雅史さん(登山家:チョモランマやマッキンリーなどの7000M級の山々に登った経歴を持つ)にお会いしてからは、もっと本格的に登るようになりました。初めて屋久島で沢登りをした時のことです。沢登りは、膝ぐらいまで水に浸かってジャブジャブと沢の中を歩きながら登る山行です。場所によっては腰まで水に浸かって歩くのです。足元は水の中ですから、よく見えません。。戸高さんは歩きやすいルートを取ってくれます。彼のすぐ後ろをついていくと安全に歩ける。しかし、何か歩きにくい。「?」なんでかなあと思いました。

屋久島は美しいところですから、「あ、きれい!あ、かわいい!」と美しい風景に目を奪われ、カメラを向けているうちに、私はみんなから大きく遅れをとってしまいました。当然、戸高さんの選んだルートはわからないので、仕方なくひとりで歩きます。その時、自分の感覚で歩いたほうがすーっと歩けていました。彼とは、体力も体格も歩幅も違う。だから、彼のあとをトレースしても、歩きにくいのは当たり前。「自分の感覚を信じていいんだ」ということを、その経験から学びました。山では、自分の感覚を信じないと死にますからね。自分の感覚を信じて山を登るとか歩くとか、自分の感覚を研ぎ澄ますことは、意識してやっています。その感覚がコーチングにずいぶん影響しています。」

 

 

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育自の魔法の誕生

「2003年に、コーチングのクライアントさんに川越子育てネットワークの方を紹介してもらいました。自分の子育て体験を話したら、『今のお母さんたちも同じように孤独感を感じているし本音を喋れないんです』と。じゃぁ何かやりましょうと、作ったのが育自の魔法の前身のワークショップです。」ひとみさんはどんな思いを持っていたのかというと「何も考えてなかったですね。自己紹介のワークをやりました。最初は託児もなく、お母さんたちが赤ちゃんを抱っこしたり、周りは子どもたちが走り回るような、騒がしい中やりました。その状態だとワークは2時間が精一杯。でも、お母さんたちが、自分のことを話してすごく盛り上がってるんですよ。一体何が起きてるんだ?と思って見ていました。」その時のワークの形は、ほぼ変わらずに、今の「育自の魔法」につながり、川越では13年間続いている。

 

「続けてこられたのは、山田博(株式会社 森へ 代表取締役・株式会社 ウエィクアップ チーフケアテイカー)の影響がとても大きいです。彼が2005年にファミリーツリーというNPOを立ち上げたとき、彼自身が受けて、『これいいねー、ひとみちゃん!』と言ってくれて、一緒にやろうという話になり、『育自の魔法』はファミリーツリーの一事業になりました。その頃、私はCTIジャパンのファカルティ(コーチングプログラムトレーナー)になっていたのでコーチングのほうに意識が向いていて、育自の魔法は年に数回程度しかやりませんでした。その時に彼が『これはいいワークショップだから途絶えさせちゃいけない』と、育自の魔法を消えないようにやりつづけてくれたんですね。育自の魔法は可能性のあるものだとずっと言ってくれていて、何かあるたびに応援してくれました。

その後、育自の魔法へのオファーがどんどん来るようになり、自分だけでは、ワークショップの数をこなしきれなくなってきました。ゆったりしたファミリーツリーの流れと、育自の魔法へのオファーの入り方へのスピード感が合わなくなってきたこともあり、別のNPOをつくりたいと申し出ました。そこで博とはかなりぶつかりました。でもほかの理事が、「みんなが願っているのは育自の魔法が多くの人に届くことだよね」と言ってくれたことで、みんなふっと腹落ちして、兄弟分のNPOとして独立を認めてくれました。その頃は、CTIジャパンのファカルティ(コーチングコースをリードする人)としても気合を入れなおして頑張ろうと思っていた矢先だったんですが、複数の人から『育自の魔法をもっとやってください』と助言されました。「でもそれをやるためには大事なものを手放さなければいけない」と。それってCTIのファカルティ?わかっているけど、散々迷いました。結局、最後には山に登って決めました。山頂から富士山がきれいに見え「参りました。わかりました。」
結局、CTIのファカルティもやめることにしました。またそこでも博には怒られました。ほんと、とんでもない奴ですよね(笑)。でも、魂がこっちって言ったのを、ノーと言えないです。そのあとの展開を見たら、やっぱり自分がコミットした瞬間に育自の魔法はガラッと大きく変わっています。」

 

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2010年、神戸市のPTA連合会の研修会に講師として呼ばれたひとみさん。そこに集まった人数はなんと330人だった。「300人だと一人ではできないから、スタッフをかき集めました。

依頼してくれた人から、『神戸の人たちは阪神大震災で家族を亡くしたり、二重ローンで苦しんでいたりして、お母さんたちの顔が暗いから笑顔にしたい』と聞いていました。研修会当日、自分の人生を語るワークをやってどうでしたか?とマイクを向けて参加者に聞いたら、『辛かったです』と泣かれちゃって。予想とは違う反応でどうしようかと思った。別の方にきいても『僕もつらかった』と言われて。でも、その大きな会場で「辛かった」と言えるような安心できる場だったんだと思いました。この会の成功は、前日に先方のスタッフのみなさんに『明日は本当にみんなの気持ちをあわせて虹がここの会場から神戸市内に全部飛ぶような、そんなイメージでやりたいんです』と話し、そのイメージを共有したからだと思います。本当にその通りになりました。
半年後には神戸市東灘区から依頼があって、老若男女20代から70代まで老若男女220人がお互いの人生を語り合いました。終わったあとの感想で『うちの街っていいね』ってみんな口々に言ってる。とても嬉しかったですね。育自の魔法は、お母さん同士だけじゃなく、地域の人々をつなげるんだと思いました。」

 

その後、育自の魔法は2013年1月にNPOを設立。ファシリテーター養成講座もつくられ、現在120名のファシリテーターが誕生している。現在は、日本のみならず世界でも開催されている。

次世代を育てるお母さんが原点。自分を大事にして育った子供たちには生きる力があると思います。そして、子育てだけではなく、誰かを支援している、介護、看護、教育、企業や団体の管理職の方々などにも多く届けていきたい。介護の現場からのニーズは大きく、プロジェクトチーム「介護のための小さな魔法」についてFacebookで発信すると、シェアが80シェアぐらいあって驚くほど反響があります。」

 

「さらに昨年から、育自モデルという概念図をワークショップで紹介しています。自分を発見し、表現開発していくと、それが社会貢献や持続可能性のある地球につながっていく、というモデルです。このモデルを説明すると、参加されるみなさんは、「自分は今、どのにいるのだろう?」と自分の立ち位置から話し始めます。企業の人の視点、自治体に勤める人の視点、看護師さんからの視点、ケアマネさんからの視点など。聞いていると、なるほど、と思うことが沢山あり、現場の様子がよく伝わってきます。
自分から社会、地球へという視点が大きく広がり、自分だけのことに集中しているつもりが、実はちゃんと社会につながっているんだ、という可能性が見えてくるようなのです。参加者のみなさんが語り始める様子に、私は将来に対して希望を見ます。

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NPO法人育自の魔法から初めての本も、クラウドファンディングで資金を集めて出版できました。思いが形になると、本当にいろんなことが動き始めます。この活動に賛同して必要な人材が集まってきます。今年は男性がもっと入ってきそうですね。女性と男性が協働関係を築きながら活動を進めてゆきたいと思います。
そう、育自の魔法が始まってから、参加者延べ人数が5300人を越えました。年間6000人までにはまだまだですが、あの6000という数字にあと700人。今年中には確実にいきます。6000人に届けたら何が起きるかとても楽しみです。」

 

「話が来た時に、いいんじゃない?と思ったらとりあえずやってみる。やってみたらわかるじゃないですか、いいかどうかは。だめだったら、やめればいいって話ですし。」

 

自分の感覚を信じて、動く。いつも何かは、そこから始まっていくのだ。

 


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